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リブランディングから始まる商品開発の可能性

リブランディングから始まる商品開発の可能性

STANDARD HOUSE REPORT vol.03

事例発表 株式会社ノーブルホーム

アウターブランディングチーム・性能ラボPROJECT 上野絢子

株式会社サンプロ イノベーションラボ 本部長・株式会社LOCAS 取締役 コマツアキラ

ノーブルホームの企業紹介

北関東茨城県を中心に施工実績1000棟超のパワービルダー。社員総数600名程度。ハウスメーカーを含めても、茨城県ではトップシェア。昨年10月にリブランディングし、主に住宅総合展示場への出展が基本的な販路の拡大戦略。総合展示場や街角展示場、モデルハウスからの集客などを行う。https://www.noblehome.co.jp/

性能ラボPROJECTの起ち上げ

(NH上野さん)2023年10月にリブランディングをし、「暮らしをひらく」という新しいブランドミッションを掲げたノーブルホーム。その一環として松尾設計室とのコラボ企画を実現することになりました。松尾設計室の松尾先生は一級建築士として設計事務所を経営されながら『健康で快適な省エネ住宅を経済的に実現する』というモットーから、その豊富な知識と技術を武器に、高いレベルでの高気密高断熱な住まいを提供している方です。

松尾設計室のホームページはこちら

YouTubeでの情報発信や、住宅系雑誌にも多く連載しているとてもお忙しい方ですが、
この度、ノーブルホームへ商品監修と技術研修を行って頂けることになりました。第1回開催以降、様々なチームが発足しており、そのうちのひとつ「性能ラボチーム」は社内各部署から抜擢されたスタッフにて構成され、松尾先生のご指導の下、住宅の性能についてより深く学んでまいります。

第1回の研修は、終日開催の長時間となりましたが、会場には約250名の社員が参加しました。WEB上でも配信をし、全社員にも参加いただきましたが面白かったと大好評でした。

2023年10月のリブランディングについて

(コマツ)ノーブルホーム様では、昨年10月に新しいブランドをローンチいたしました。元々は、ブランドロゴカラーは緑色でしたが、ノーブルホールディングス、いわゆるグループ会社のトップの部分ではこの緑色を活かしつつ、「日本の暮らし方を変える」というブランドコンセプトとともにホールディングス、グループのホールディングスとしてブランディングしていくという方向性を定めました。

そしてもうひとつ、ノーブルホームというサービスサイトに関しては、考え方をがらりと改めて、いわゆるSAGE(賢者)のアーキタイプとしました。これは技術、それからデザイン、清廉性をしっかり訴求していくというブランドの方向性(コミュニケーションの方向性)です。昨年の10月10日にリブランディングしましたが、新しいブランドのローンチイベントを水戸市民会館で開催しました。

リブランディングプロジェクトを通して変わったこと

(NH上野さん)私は新卒で入社して14年ぐらい経ちます。このリブランディングプロジェクトを通してノーブルホームの新しい企業コンセプト「暮らしをひらく」について、「ひらく」という言葉に3つの意味を含ませているところや、その意味合いについて考え、そしてローンチイベントを通してさらに考えを深めることができました。

このプロジェクトメンバーだけでも約70~80人います。メンバーで話し合い、どういった存在意義で会社がこの地域に存在するのかを改めて日々考え、理解を深めています。

自分自身の変化では、この住宅という仕事に携わる意味や会社にいる意味というところを考え直したことがたくさんありました。今、実際にブランドが変わり、毎朝の朝礼でこのクレドを深めて、それぞれがどういう自分の事象でこれを感じたかや、こういうことが当てはまると思ったから、こう変わりたいという話を共有する時間も持つようにしました。そのことによって、それぞれが考える習慣や発信する習慣などが身近になったと感じます。これからではありますけれども、まだまだ変わっていけるという感覚を持っています。

ノーブルホームサイトのブランドカラーの大きな変化について

(NH上野さん)当初このブルー系になるということには、ずっと30年、緑色でやってきたので正直、困惑はありました。ただ、このブルーとプラチナの色の意味合いがしっかりと考えの中に落とし込まれていたので、私たちノーブルホームが、もっとエレガントにもっと清楚なアーキタイプへ向かっていく為に、色を変えて自分たちを磨いていくことについて、社内でも納得感がありました。変わっていくという感覚とともにこのブランドカラーも根付いたと感じています。

性能面での変化について

(NH上野さん)今までも構造面などではしっかり取り組んでいるという認識はありましたが、断熱、温熱環境、性能という点では、今の国の基準に合わせて改訂することに取り組んできました。しかし一流になるために、「健康」というテーマでしっかりと取り組むという点については、社員の意識もまだそこまでではなく、一部の社員の間だけであったり、お客様の要望があったら対応するという環境だったと思います。

今後は、もっと市場的に求められると考えております。このブランドタイプを武器にして、お客様にしっかり説明して選ばれる会社になりたいという意識と落とし込みが、今社内で広がっているところであると考えています。グループ内でのノーブルホームでも700棟、1,000棟という数に取り組むことは、全員がその性能が実現できるのかという点について課題が多いですが、リブランディング後はそこに真摯に取り組まなきゃいけないという意識が、社内に確実に広がっていると感じています。

「アウターブランディングチーム 性能ラボPROJECT」について

(コマツ)去年、リブランディングするにあたって、ブランディングに関わっていくブランディングチームの方々が約80人いらっしゃいました。その一人一人が「インナーブランディングチーム」、「アウターブランディングチーム」、「ソーシャルブランディングチーム」に所属し、さらにその下に様々なテーマを設定することで自分の得意なところで「ノーブルホーム」というブランドを伸ばしていく。そんなプロジェクトを手掛けられました。

今回の「性能ラボPROJECT」は、ノーブルホームの商品、プロダクトの性能を高めていくという点で集まり活動をされています。そしてリブランディングをしてから半年が経過し、先日半期の報告会が開催されました。

目的:弊社のSAGE(賢者)というアーキタイプにふさわしい性能もデザインも強い一流企業になること
商品力・説明力を上げるための施策としまして、①~③があります。
研修(講師:松尾先生)
自分たちで計算、検証ができるようになること、商品について話せるようになることを目標にした研修内容です。
商品の開発と実棟
今の最適解として松尾先生も提唱されている「健康で快適な暮らしを経済的に」を目標に、等級6より少し上の断熱気密、全館空調がかなっている商品をしっかりと作り上げます。そのためにも実棟を建てて検証し説明ができる状態をつくることを目指します。
G3、等級7の商品開発
省エネ性能ラベル表示の最高値を打ち出していけるような商品の開発を目指します。

次に、未来に向けた研修として位置づけているのが、2050STANDARD HOUSE PROJECTに参加し、皆様との事例の共有、研究・発信というところをやっていきたいと思っております。これら4点を進めていくのと同時にブランディングしていくことが、全体像となります。

「説明力向上」―ブランドイメージを訴求することの大切さ
(コマツ)ありがとうございます。松尾先生と取り組んで一緒に商品開発しますと、松尾先生のつくるお家のファンが集まってくるのも事実です。ただやっぱり商品の性能だけで売っていくというのはなかなか難しいというところがあると思います。集客に関しては、絶対大丈夫なブランドであるという「イメージ」をしっかり訴求し、お客さんに来てもらう。その上で(信頼できる)商品があるということが大切だと思います。

(NH上野さん)松尾先生の研修を聞いても改めて感じたことは「お客様が快適に住む」というところが本当のゴールだということです。数値や国の基準ではなく、お客様が満足できる住まい方、例えば空調の使い方、計算の仕方も含めて、お客様が快適、健康でいられるというところの根拠を持って、お客様に話せる準備ができていること。これが大切だと考えています。
また引き渡した後も、データや定期的なコミュニケーションをしっかり取って、継続していくことが大切と改めて思っています。そこを御提案できる状態を作りたいと思ってます。

高いコミュニケーション能力をもつ営業の強みを活かすために
(コマツ)「コミュニケーション力の高い営業」は、正直なところどんなものでも売れてしまうのも事実です。ノーブルホームさんには、このような高い営業力を誇る社員が多くおられます。このような営業マンが性能を含めて、家のことを心から好きになっていただく説明をできることこそが、大きい社会貢献になると思っています。「説明力向上」という狙いも、松尾先生の研修の中にあると考えています。

研修を更に効果的なものとするために
(コマツ)次に具体的なアクションについて考えたいと思います。松尾先生の研修第1回目がありました。松尾先生の研修1回目の概論では住宅を好きになることができたと思います。この後は、設計や営業、インテリアコーディネーター、営業マンといった方々が、どう動いていくのかということを、細部含め知っていくというフェーズに入ると思います。社内の皆さんの参加率はかなり高かったと思いますが、これを啓発していくためにやっている具体的なことがあれば教えてください。

(NH上野さん)この研修に参加した社員から現在アンケートを集めています。もっと学びたかった点や、気になったという点を収集しています。そこから抽出しまして、アンサーという形でアウトプットしていきたいと考えています。

(コマツ)ありがとうございます。研修はやって終わりになってしまう会社がありますが、ちゃんと社員一人一人がアウトプットして、積み上げられたという提示と実績が大事です。積み上がるという事実が自分たちが成長できたという証になり、それをまたアウトプットしていくことも大事です。この資料の中で、コラムの発信、お客様向けセミナー、YouTubeなどがあったと思いますが、こういったところに繋げていくことが大切ですね。

商品開発について
(NH上野さん)次に商品開発ですが、弊社では等級6プラスの商品開発を目指しております。本体価格も現在のメイン価格帯でのご提供を目指しているところです。
(小松)なるほど、結構安めですね
(NH上野さん)ここは、もう高性能を浸透させ、ノーブルホームがスタートしていくためにも、勢いをつけるという経営判断をいただきました。
(コマツ)なるほど。松尾先生の言葉を思い出します。「いいものを知っていると悪いものが分かる」と。悪いものに囲まれてたら悪いものには分からない。だから、いいものを売っていく必要があると仰っていましたね。ある程度、価格を抑えるという戦略で展開される場合、売りやすいと思うんです。高性能でいいものだからたくさん売れます。そこに対して社員さんたちが「いいもの」を売ってるから仕事が楽しくなる。いいものを安く提供できているというところで、更に誇りも持つことができ、正のスパイラルに上がっていくと思います。

商品開発→実棟→G3・等級7の商品開発の具体的な方法について
(NH上野さん)松尾先生には検証と並行しまして、商品の監修に入っていただく予定になっております。両方とも、主力の商品と上位グレードの商品のところは、どちらも一緒に手掛けたいと考えています。

G3の商品開発にチャレンジする意味とは?
(NH上野さん)やはり正直、値段が高く誰もが買えるスペックではないとは思っています。また弊社でもそこまでの量産するノウハウはない状態ではありますが、やはり2050年の話も含めた今後、これらが基準となる世の中がくるのではないかと考えています。物価がかなり上昇し住み切れないというような状態になることを見据えまして、研究開発としてこの性能商品を持つ。その次にコストと向き合い、お客様に提供できる価格帯の商品にしていくことを考えて取組みを進めたいと考えています。

平屋の需要について
(コマツ)北関東は東京のベッドタウンでもあり、いわゆる地方都市としての存在でもあると思います。ノーブルホームさんはベッドタウンとしての町、それから地方都市としての商圏、これ両方をお持ちだと思います。この間、お伺いしたときに平屋率が非常に高いとお聞きしました。これは1,000棟に対してどれくらいの比率でしょうか

(NH上野さん)今の累計ですと約36%が平屋です。平屋が全体の約4割、5割という月もあり、年代問わずに平屋は人気です。特に4LDKの平屋はメイン商品です。お子様2部屋というところは多いです。もちろん、都市部の方に行きますと、1部屋でコンパクトな平屋も多いんですが、平屋が人気なのは家事動線や老後を考えていくというところで選択されているのはないかなと思っています。

ノーブルホームの事例についてのまとめ
「フットワークと交渉力を最大限に発揮できる1,000棟ビルダー」という利点を生かして、「高性能で健康・快適を提供する住宅を開発する」
②「社員全体の住宅性能リテラシーを高めて、住宅性能で生活者が享受できるメリットを一般化する。」
③「段階を踏んだ未来を見据えた商品開発のスキーム作成で確実なレベルアップを図る」


1,000棟ビルダーは、一気に一足飛びで行くというわけではなく、段階的に商品をしっかり開発し、社員の教育を行い全体の底上げを図る、そして出会うお客様も幸せにしていくことがとても重要です。
ノーブルホームは、その正のスパイラルを生み出し続けています。